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「しきょうそん探偵からの挑戦 青銅器検定 上級編」解説
2021.05.17

Q1. 殷周青銅器に盛られていた食べ物として間違っているのはどれ?

A. 正解は「唐辛子」です。激辛のイメージが強い中華料理ですが、唐辛子は実は中南米が原産。古代中国には存在していませんでした。

肉を乾燥させてつくるビーフジャーキーや、野菜を酢漬けにしたピクルスなどは、豆(とう)という器に載せて提供されました。穀物を盛る器には簋(き)や簠(ほ)など、いくつかの種類があったことが知られています。

左より 環耳豆(かんじとう)戦国前期・紀元前5世紀、直文簋(ちょくもんき)西周前期・紀元前11-10世紀、象鼻螭文簠(ぞうびちもんほ)春秋前期・紀元前8-7世紀 泉屋博古館蔵

Q2.「丁寧」の語源となった青銅器はどれ?

A. 正解は「鉦」。鉦は別名を「丁寧(叮嚀)」といい、手で持ってカウベルのようにたたく打楽器の一種です。戦争のときに部隊へ号令をかけるために用い、太鼓が鳴ると「進め」、鉦が鳴ると「止まれ」の合図だったそうです。そこから転じて注意が行き届いている様をあらわすようになったとする説があります(本来は音をあらわす擬音語だったという説もあり)。

鉦を鳴らすイメージ。本来は手で支えます。 素文鉦(そもんしょう)レプリカ 春秋後期・紀元前6-5世紀

Q3. 虎卣は世界に2つだけ。泉屋博古館とあと1つはどこにある?

A. 正解は「パリ」。パリ市内にあるチェルヌスキ美術館には泉屋博古館のものとそっくりの虎卣が所蔵されています。虎に抱きつく人の耳にピアスの穴が空いていたり、背中の刺青のような文様が入っていなかったりと、細かな違いはありますが、ほぼ同形同文様の器です。ちなみに、東京や蘇州、シアトルには虎卣はいませんが、殷周青銅器を収蔵する博物館・美術館があります。ぜひ訪れてみてください。

   

Q4. 饕餮or饕餮紋の説明として間違っているのはどれ?

A. 正解は「皇帝の象徴」です。饕餮文が流行していたのはいまから約3000年前の殷周時代のことで、当時は皇帝という位は存在していませんでした。前221年に秦王政が中国を再統一し、はじめて皇帝を名乗るようになります。

饕餮は古典文献のなかでは欲深い邪悪な獣として記されており、「四凶」のひとつにも数えられています。殷周青銅器によくあらわされている獣の顔面文様がそのように名づけられたのは宋代のことで、殷周時代当時にそれがどのように呼ばれ、どのような意味があったのかには謎が多いですが、一説には当時の最高神であった「天帝」を象徴しているともされます。 饕餮文の表現方法にはさまざまなバリエーションがあり、なかには口角が上がってにやっと笑っているような表情のものや、さまざまな形状の角があらわされたものもあります。ふたつとおなじものはないため、ぜひいろいろな饕餮をじっくり見比べてみてください。

饕餮文瓿(とうてつもんほう)殷後期・紀元前13世紀 泉屋博古館蔵

Q5. 青銅器のかたちをあらわした象形文字でないのはどれ?

A. 正解は②です。この字は「貝」と読み、殷周時代に貴重な財物としてあつかわれていたタカラガイをあらわした字と考えられています。

①は「鼎」、青銅器の鼎を横から見た状態をあらわす象形文字で、三脚や把手などの特徴をよくあらわしています。③の「戈」は中国古代の青銅製の武器の一種。長い木製の柄にナイフのような刃物を直角に取りつけ、上には吹き流しをつけて使用しましたが、この字はその様子をかたどっています。④の「鬲」は湯を沸かしたり穀物を煮たりするために用いた青銅器をあらわした文字。ただ、この例では真ん中の脚の部分が「羊」という字に置き換わっています。

左より 饕餮文鼎(とうてつもんてい)殷後期・紀元前12世紀、戈(か)殷後期・紀元前13-11世紀、雲文鬲(うんもんれき)春秋前期・紀元前8-7世紀 泉屋博古館蔵