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「木島櫻谷 四季の金屏風 -京都画壇とともに-」展示のみどころ
2021.08.01

みどころ1 春・夏・秋・冬、四双の金屏風に囲まれる

本展の中心となる4組の屏風は、大正時代、住友家15代当主春翠が建設に7年の歳月をかけた大阪の茶臼山本邸のために特別注文されたものです。新本邸は敷地2万坪におよび、池泉回遊式庭園(現在の天王寺慶沢園)に面して書院造風建築が棟を重ねてたたずんでいました。春翠は、その大広間で季節ごとに屏風を選び、ほかの美術品とともに客をもてなしました。

これらの屏風は、空間に華やぎと安穏をもたらすばかりでなく、余白のとり方などにその場の人たちの姿を引き立てる配慮もみられます。展覧会に出品する作品のような主張の強さとは別趣の、抑制されたなかに典雅で洗練された近代的美意識を感じさせます。京都の室町という美術工芸産業の中心地で生まれ育ち、美が暮らしに溶け込む上質な生活文化を知り尽くした櫻谷ならではのバランス感覚が、そこにはうかがえます。

今回はそれらを展示室に一堂に集め、ぐるりと立てめぐらします。どこまでもにごりない輝き、澄みわたる空気、どうぞ存分にひたってください。

参考写真 2014年泉屋博古館分館展示風景
参考写真 2014年泉屋博古館分館展示風景
参考写真 2014年泉屋博古館分館展示風景
参考写真 2014年泉屋博古館分館展示風景

みどころ2 きら星のようなニューフェイス~新収蔵の櫻谷作品

本年、縁あって当館の館蔵品に5件の櫻谷作品が加わりました。

《帰農図》《唐美人》、そして3件の寄贈品です。《猛鷲波濤図屏風》(明治36年)は20代で早くも京都で名を馳せた時期の作で、大胆で素早い筆裁きで大鷲を捉えたダイナミックな1点。

《葡萄栗鼠》では、生い茂る葡萄樹の葉陰で一心に実をほおばる栗鼠。ふわふわの毛描き、つぶらな瞳で見る人を惹きつけてやまない姿は、櫻谷が高く評価された動物画のなかでも完成度が高く、脂ののった時期の1幅です。

《月図》は櫻谷の師匠今尾景年のご子孫のもとに伝来したものです。広がる雲海に茫洋と浮かぶ月。描かれるのはただそれだけ。にもかかわらず、大気のゆらぎすら感じさせる情緒豊かな描写に惹きつけられます。円山応挙以来、京都の画家にとって月は重要な画題でした。

それぞれ青年期、壮年期、円熟期の特徴的な作品で、従来大正中期に集中していた当館の櫻谷コレクションに奥行と広がりが生まれました。

木島櫻谷《猛鷲波濤図屏風》(右隻)明治36年(1903)
木島櫻谷《猛鷲波濤図屏風》(右隻)明治36年(1903)
木島櫻谷《葡萄栗鼠》(部分)大正時代
木島櫻谷《葡萄栗鼠》(部分)大正時代

みどころ3 櫻谷を育んだ京の町の息づかい

櫻谷の語る幼少期の思い出には多くの画家が登場します。生家では教養豊かな父をたずねて、近所の今尾景年や岸竹堂が出入りし、すこし出歩けば通りすがりにいくつもの画塾の様子が見られました。彼の育った中京界隈は、染織を中心とする商いの中心地であり、商人や学者、画家や茶人などが混然と住まい、自由に行き来する土地柄でした。そこには円山応挙らがでて活況を呈した江戸時代の京都画壇そのままの空気が流れていたようです。

幕末の京都に生まれた住友春翠の収集日本画にも、それら京都の画家や文化人ゆかりの作品が見られます。なかには今日ではその名を聞くことのない画家も含まれます。それらはさながらタイムカプセルのように往事の京の町の空気を伝えてくれます。展示を通じ、櫻谷が吸い込んだ町の空気、作品の背景を感じとることができるでしょう。